住宅宿泊事業とは?


1 住宅宿泊事業者に係る制度の創設

(1) 住宅宿泊事業を行うとする者は、都道府県知事(※1)への届出が必要となります。

◆年間提供日数の上限は、180日(泊)とし、地域の実情を反映する仕組みを創設(※2)

 

※1:都道府県知事に代わり、保健所設置の市の長(政令市・中核市等)、特別区の長(東京23区)が届出の受理・監督及び条例設定事務を処理できます。

※2:各自治体の条例により、住宅宿泊事業の実施の制限が可能。

 

(2)家主居住の場合は、住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(※3)が義務付されてます。

 

※3:周辺住民等への事前周知、事業を営もうとする住宅の安全確保措置、宿泊者の衛生の確保措置及び安全の確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣の苦情の対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等

 

(3)家主不在の場合は、住宅宿泊事業者に対し、上記の措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付されてます。

 

(4)都道府県知事等は、住宅宿泊事業者に係る監督の実施が義務付けされてます。

 


2 住宅宿泊事業とは?

★ホテル・旅館等の営業者(旅館業法第3条の2第1項に規定)以外の者が、宿泊料を受けて住宅に宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間(4月1日~3月31日)で180日を超えないものをいいます。

※180日を超えれば、旅館業の許可が必要となります。



3 住宅宿泊事業が実施できる住宅とは?

★家屋内に台所、浴室、トイレ及び洗面設備が設けられていることが必須です。

※ 台所・浴室・トイレ・洗面設備は、必ずしも1棟の建物内に設ける必要はありません。同一の敷地内の建物について一体的に使用する権限がある各建物に設置された設備が使用可能な状態であれば、一つの「住宅」として届けることは可能です。

※ 浴室・トイレ・洗面設備は、それぞれ独立ではなく、3点のユニットバスの設備でも可です。また、浴室に浴槽がなく、シャワーのみの場合でも可です。



4 住宅宿泊事業として認められる家屋とは?

(1) 現に人の生活の根拠として、使用されてる家屋

現に、特定の者の生活が継続して営まれてる家屋であり、短期的に当該家屋を使用する場合は該当しません。

※ なお、当該家屋の所在地を住民票上の住所としている者が届出する場合には、当該家屋は該当します。


(2) 入居者の募集が行われてる家屋

住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、人の居住の用に供するための入居者の募集が行われてる家屋も該当します。

※ なお、入居者の募集の意図がないことが明らかなである場合には、該当しません。


(3) 随時その所有者・賃貸人・転借人の居住の用に供されてる家屋

純然たる生活の本拠としては使用していないものの、これに準ずるものとして、その所有者等が随時居住している家屋も該当します。

※ なお、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは、該当しません。

★ 住宅宿泊事業の実施については、当該住宅が、上記の要件に該当しているか、事前の確認が必要です。

具体的な事案について、当事務所に、ご相談ください。



5 住宅宿泊事業者の業務とは?

(1) 宿泊者の衛生の確保について

◆ 居室の床面積は、宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保すること

◆ 清掃及び換気を行うこと

(詳しくは、こちらを参照「旅館業における衛生管理要領」)

 

(2) 宿泊者の安全の確保について

住宅宿泊事業者は、下記の事項が必須となってます。

◆ 非常用照明器具を設けること

◆ 避難経路を表示すること

◆ 火災その他災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を講じること

 

(3) 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保について

住宅宿泊事業者は、宿泊者に対し、下記の事項について行う必要があります

◆ 外国語を用いて、届出住宅の設備を使用方法に関する案内をすること

◆ 外国語を用いて、移動のための交通手段に関する情報を提供すること

◆ 外国語を用いて、火災・地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内をすること

 

(4) 宿泊者名簿について

住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿の備付けにおいて、下記の事項について行う必要があります。

◆ 本人の確認を行った上で作成すること

◆ 作成の日から3年間保存すること

◆ 宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日を記載すること

◆ 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号を記載すること

 

(5) 周辺地域への悪影響の防止について

住宅宿泊事業者は、宿泊者に対し、下記の事項について、書面の備付け等の適切な方法により説明する必要があります。

◆ 騒音の防止のために配慮すべき事項

◆ ごみの処理に関し配慮すべき事項

◆ 火災の防止のために配慮すべき事項

 

(6) 苦情等への対応について

住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速に対応しなければなりません。

 

(7) 住宅宿泊管理業者への委託について

住宅宿泊事業者は、以下の場合には上記(1)~(6)の措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。

◆ 一の届出住宅の居室の数が5を超える場合

◆ 人を宿泊させる間、不在(※)となる場合

※ 日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除きます。

 

(8) 住宅宿泊仲介業者への委託について

住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約の締結の代理、又は、媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければなりません。

 

(9) 標識の掲示について

住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、見やすい場所に、標識を揚げなければいけません。

 

(10) 都道府県知事等への定期報告について

住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月の下記の内容について、都道府県知事等に報告が必須となってます。

◆ 届出住宅に人を宿泊させた日数

◆ 宿泊者数

◆ 述べ宿泊者数

◆ 国籍別の宿泊者数の内訳

 



【条例による住宅宿泊事業の実施の制限】

★都道府県等は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するために必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い、条例で定めるところにより、区域を定めて住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができます


【東京都新宿区の場合:「住宅宿泊事業の区域と期間の実施」】

住宅専用地域では、月曜日の正午から金曜日の正午までは、住宅宿泊事業を実施することはできません。住宅専用地域以外では、曜日を問わず、法の規定どおり、年間180日まで事業を実施することができます。

 

※ 住居専用地域:都市計画法に基づき「良好な環境を保護するための地域」と定められた地域で、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域をいいます。