(審議経過)
<議案提出者:内閣(法務省)提出>
・衆議院議案受理年月日:H30.3.13
・衆議院可決:H30.6.19
・参議院議案受理年月日:H30.6.19
・参議院可決:H30.7.06
・公布:H30.7.13【法律番号72】
・施行期日:R1.7.01(原則)、自筆調書遺言:H31.1.13、配偶者居住権:R2.4.01
注目!この民法改正は、配偶者の居住の権利を保護するための方策や自筆証書遺言の方式を緩和するなど,多岐にわたる改正項目を盛り込んでおります。
★法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度は、2020.7.10(金)から始まります。
★原則的な施行期限は、2019年7月01日、★自筆調書遺言の方式を緩和する方策は2019年1月13日、★配偶者居住権は2020年4月01日に決定しました。
■施行期日:2019年1月13日
◆自筆証書遺言
★相続財産は自筆することを免除
■施行期日:2019年7月01日
◆配偶者の保護
★婚姻20年以上の夫婦間で贈与された自宅を遺産分割から除外
◆介護の特別寄与料
★子の配偶者等も介護の貢献分の金銭請求が可能になる新規定
◆相続財産の取得要件
★法定相続分を超える財産の取得には登記が必要の新規定
◆個人の預貯金
★遺産分割協議中でも換金可能に「仮払い制度」新設
★調停中でも裁判所が必要と認めた分は換金可能
■施行期日:2020年4月01日
◆配偶者の保護
★自宅に生涯住み続けられる「配偶者居住権」を新設
■施行期日:2020年7月10日(金)
◆法務局での保管制度を新設(保管分は検認不要)
※ H30.8.28 コラム追加
この改正は、超高齢化する社会の中で、家族のあり方が大きく変化し、法律の手直しが必要となったことが改正の大きな背景です。
特に、相続人となる配偶者の年齢が80歳代となるなど、高齢化が一段と進んでいることから、配偶者の生活保障の必要性が相対的に高まっており、一方、子は弱まっている傾向にあります。
現行法では、相続人が配偶者と子の場合は、法定相続では、それぞれ1/2と等しく扱われてます。しかし、日本人の平均寿命は、女性も男性も80歳を超えており、配偶者のどちらかが亡くなれば、遺された配偶者は、以後の生活を維持するためには、遺産に頼らなくてはならない状況が現実にあります。そのため、今回の改正は、配偶者への保障を手厚くする内容となっております。
★今回の相続法改正の大きなテーマの一つが「配偶者居住権」制度の創設です。
配偶者居住権とは、相続によって、自宅の建物の所有権が他の相続人等に渡っても、被相続人(亡くなった者)の配偶者が自宅に住み続けられる権利を言います。また、配偶者居住権とともに、遺産分割の終了後6ヶ月間は無償で住める「配偶者短期居住権」も新設されたところです。配偶者居住権の具体的な事例については、次のとおりです。
【配偶者居住権の具体的な事例】
夫(82歳)・妻(80歳)、子ども1人(長男)の家族で、夫が亡くなって、相続が始まった例を見てみましょう。
土地・家屋2,000万円のほか、預金が1,600万円あった夫が亡くなった場合、遺言書はなく、老齢の妻と同居していない子1人が遺産分割協議をしなければならないケースです。
妻は、長年夫婦で暮らした自宅を相続して引き続き住みたい場合で、妻が自分の預貯金をもってない場合の事例です。
自宅だけ相続しても、以後の生活費がないため、預金の1/2の800万円を自分の生活費として、子には預金1/2の800万円と考えていましたが、子は法定相続分1/2の1,800万円の遺産を主張する場合があります。
この場合、妻は、仮に預金を全部渡しても、不足の200万円確保できない場合には、自宅を売却して「換金」せざる得なくなり、そうした場合、以後の住まいが確保できず、当面の生活費がなくなるなど、困窮する可能性もあります。また、高齢の場合、転居先の住宅の確保も難しく、新しい環境に転居することは精神的にも負担が大きく、こうした事態を回避するために「配偶者居住権」が設けられたところです。
配偶者居住権と配偶者短期居住権は、いずれも自宅建物の所有権を取得できるものではありませんが、終身または一定期間、自宅建物に住み続けられる権利です。
今回の相続法改正により、一定の手続をすれば、子の主張にかかわらず、妻は生涯住み続けられるようになります。一定の手続きとは、妻は家に「居住権」を設定する登記手続きを法務局にすることで、「配偶者居住権」の権利を確保できます。
居住権(長期居住権)は、所有権と分離しており、配偶者固有の権利で売却はできない分、家全体の評価額よりは低くなります(自宅建物の評価額の1~2割(簡易な計算の場合))。なお、居住権は相続税の課税対象となることも、注意が必要です。
★今回の改正では、結婚20年以上経過の夫婦は、夫婦の一方が死亡した場合、被相続人からその配偶者(夫または妻)に対する自宅不動産の遺贈や生前贈与は、特別受益に当たらないとされ、相続財産に加算しないで、相続分を計算できるようになりました。
具体例は、以下のとおりです。(自宅不動産と預貯金2000万円が相続財産の場合)
現行法では、夫が「自宅不動産(評価額6000万円)は妻に譲りたい」と考えても、妻に生前贈与または遺贈すると、その評価額6000万円が特別受益と認定され、預貯金2000万円に、自宅の土地・建物6000万円を加えた相続財産8000万円が遺産分割の対象でした。
子らが妻の特別受益を主張した場合、妻の相続分は1/2の4000万円となり、すでに6000万円の自宅を取得しているため、預貯金を得ることはできません。
しかし、改正法では、被相続人の明確な意思に反しない場合、生前贈与や遺贈は「特別利益ではない」として算定します。このため、事例のケースでは、分割対象となる相続財産は、預貯金の2000万円のみとなります。妻は、すでに取得した不動産に加え、預貯金の1/2である1000万円も得ることができます。
この改正が適用できるケースは、所有者である被相続人の「贈与」または「遺贈」する意思が必要となります。その意思を明確に示すためには、当該不動産の所有権移転、または、遺言書に明記することが前提条件となります。また、相続法に規定してるのは、法律婚のみであり、事実婚は含まれてません。
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