スマート農業の実現に向けて



【スマート農業をめぐる動きについて】

 

今、日本の農業が大きな転換期を迎えています。

 

令和6年6月には、食料・農業・農村基本法が25年ぶりに改正され、これからの農業の新たな方向性が見えてきたところです。

 

この新たな方向性は、食料安全保障(平時・不測時)の確保、持続可能な農業をするための環境配慮、スマート農業の導入・普及、農業人材の確保、適正な価格形成など、重要テーマが新たに条文に盛り込まれました。

 

農業を取り巻く状況の中で、大きな変化の一つに、農業経営の規模拡大・法人化です。

 

稲作経営で見れば、全国的に、作付面積が20ha~50haの規模拡大を実現した農業経営者が各地域に現れ、農業ビジネスとしての業績を確立しつつあります。

 

背景には、小規模農業者の高齢化等に伴う離農が相次ぐ中、耕種条件の良い農地が地域の中核的な農業者に引き継がれる(利用権の設定等)ことにより、規模拡大が加速しています。

 

生産性向上において、いかに効率的に付加価値の高い農業経営を実現できるかが、農業ビジネスを確立できるポイントとなります。

 

この中で、特に、生産性の向上や環境配慮・資源コスト高などへの対応するために、スマート農業機械の導入なしでは、これからの収益性に高い農業経営は実現できません。

 

これを実現するためには、スマート農業の導入・普及が不可欠であり、そのために「スマート農業技術活用促進法」も令和6年10月1日に施行されています。 

 

この法律は、農業の生産性の向上を図るため、「スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入に関する計画(生産方式革新実施計画)」と「スマート農業技術等の開発及びその成果の普及に関する計画(開発供給実施計画)」の2つの認定制度を設け、認定を受けた農業者等は、金融・税制等の特例措置を受けることができます。

 

これは、農業基本法改正のポイントの一つに、持続可能な農業と環境保護の推進が最重要課題となっています。

 

農業生産現場では、生育・栽培過程において、多くの温室効果ガスを排出しており、化学肥料や化学農薬が環境に悪影響を与え、地球温暖化の要因になっているとの指摘もあります。

 

「みどりの食料システム戦略」においては、政策手法のグリーン化の取組として、2030年までに施策の支援対象を持続可能な食料・農林水産業を行う者へ集中していくことを目指すとともに、補助金拡充、環境負荷低減メニューの充実、これらとセットでの「クロスコンプライアンス」の要件の充実を図ることとされたところです。 

 

農林水産省では、令和6~8年度の試行実施を経て、全ての補助事業等に対して、最低限行うべき環境負荷低減の取組の実践を義務化する「クロスコンプライアンス」を導入され、これにより、農林水産省の補助金等の交付を受ける場合には、環境負荷低減の取組の実践が必須となっております。

 

地球温暖化により、令和6年産は、水稲では高温化による白未熟粒や胴割れの発生が顕在化、野菜ては、各作物の全国的な不作による価格高騰が消費者の家計を直撃しています。

 

このため、水稲や野菜・果樹において、気候変動を踏まえた品種改良や、暑さに強い品種改良、栽培手法の工夫が求められています。 

 



【スマート農業の実現に向けて】

 

スマート農業の主な目的は、「(1) 農作業の効率化・省力化」と「(2) 収益向上・付加価値向上」の二つです。

 

取組にあたっては、生産現場において、スマート農業機械等を導入し、トラクター・田植え機・コンバイン等の自動運転、ドローン(カメラ・センサー搭載)による肥料散布・農薬散布、気象・土壌等の衛星画像+AI解析による農業データの連携、GPS・GISとカメラ・センサー・AIを用いた画像解析などが、スマート農業機械の実践において、大きな成果が見込まれます。

 

これらのスマート農業機械と農業関連データを連携活用するには、作業やほ場環境を「記憶」できる生産管理アプリ(アグリノート(ウォーターセル社))やザルビオ(BASFジャパン社))を利用することによって、ほ場別に詳細なデータが取得可能となります。

 

また、今後のスマート農業の展開には、スマート農業機械の操縦技術が不可欠であり、熟練農業者の技術サポートを受けつつ、若手農業就業者は、ITスキルを活かした操縦技術者になって、地域農業のスマート農業導入の即戦力になれる道が開けます。

 

 【稲作におけるスマート農業の導入】

 

弊社支援の若手農業者の稲作スマート農業導入について、整備の初期段階ですが、ご紹介します。

 

この若手農業者は、稲作の播種準備から、耕起作業・栽培管理・収穫・調整までの生産管理において、GISの機能を持ったシステム(ザルビオ)に、ほ場の状況や作業履歴記録、作業データの分析(アグリノート)を重ねて、各ほ場ごとにデータ管理(生産管理システム)を実現しています。

 

稲作に必要な農機であるトラクターにおいては、スマート農業機械として最初に実用化を図り、農地の耕起・整地に活躍し、労力面の効率化が実現できたところです。

 

は種は、技術支援のバイエルクロップサイエンス社の開発した「バイエルシードグロース」の「水稲の種もみに直接薬剤を塗沫処理する種子処理技術」を活用し、本田に移植後の病害虫の防除や除草に、化学農薬の軽減とともに、労力軽減の効果をもたらすことができたところです。

 

スマート農業技術を有した田植え機、地点ごとの収量を計測可能な収量コンバイン、農業用ドローンは、令和7年度に、みどり法認定農業者の優遇措置を活用した融資(農業改良資金)で導入予定です。 

 

2年以内には、は種・耕起・田植え・栽培管理・収穫・調整までの各作業別のスマート農業機械を整備し、農作業の効率化・省力化、収益向上と付加価値向上の実現を目指して、取り組んでいるところです。

 

導入費用については、令和6年10月に「みどり法認定通知書」により認定を受けた「環境負荷低減事業活動実施計画」に基づき、農業改良資金(日本政策金融公庫) からの融資を財源に導入予定であります。

 


【徒然のひとこと】 


農業経営において、農基法改正以降、スマート農業機械の導入に関する相談が増えております。

 

ご相談の内容は、規模拡大を図っており、省力化・効率化するために、スマート農業機械を導入に関しての補助金等の支援相談が大半です。

  

行政書士の中では、農業関係の支援は、農地転用等の支援が限定的であり、農業経営・農業技術・農業会計や、農業関係の補助金支援が可能な知見を有している行政書士は、ほとんどいない状況です。

 

弊社は、農業支援につきまして、部門を問わず、これまでに多くの実績を有しておりますので、お気軽に、ご相談ください。