最近、高齢者の方から、日々の生活や療養、食事など身の回りのことが、できなくなったことから、高齢者住宅について選び方や入居について、ご相談が増えています。
令和5年7月に、80歳代(要支援1)のご夫婦から、「新しい施設で、食事の提供(施設内の調理)があって、やすらぎとゆとりの暮らしを実現できる浴室付きの50㎡超の居室で、今後、介護が必要となった場合に備えて、介護も可能な高齢者向け住宅を探してほしい」との相談がありました。
その日のうちに、居住の区域内で、直近1年以内に新築オープンした介護施設(2カ所)に出向き、施設内の見学や利用料金等をお聞きし、高齢者向け住宅や介護施設の現状について、検討に入ったところです。
上記を含めて、隣接の区域も含め、15カ所以上の高齢者向け住宅や介護施設について比較・検討したところです。
各施設(入居者)の規模や支援・介護・医療サービス提供の内容、入居の初期費用、月ごとの利用料(家賃やサービス料金等)、介護が必要となった場合の対応など、運営者別・施設別に、大きな格差があり、高齢者の住まいとして適切か、年金収入のみの高齢者が負担できる利用料なのか、サービス提供が十分なのかなど、疑問が生じる施設もありました。
当方は、東京大学市民後見人養成講座の修了者(第7期:2014年)で、認知症などの法定後見・任意後見、高齢者の住まいなどの講義・現地実践などを通じて得た知見・経験を活かし、10年間、この取組を継続してまいりました。
これまで、成年後見申立の支援や遺言書の作成支援、高齢者向け住宅のご紹介などにより、区内の高齢者の方々のご支援を多くさせて頂いているところです。
これまでの「高齢者の住まい」ご支援の実務において、高齢者住宅の選定・入居・契約に当たって、注意する事項が数多くありました。
まず、「高齢者住宅」とは、法的な定義はないですが、介護保険法(2000年)の「施設サービス」「在宅サービス」、高齢者住まい法(正式には「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(2001年))の「サービス付き高齢者向け住宅」にまたがる概念です。
1 高齢者住宅の施設タイプ
(1) サービス付き高齢者向け住宅(自立・要支援・要介護)
(2) 介護付有料老人ホーム(自立・要支援・要介護)、住宅型有料老人ホーム(自立・要支援・要介護)、特別養護老人ホーム(要介護)
(3) ケアハウス(軽費老人ホーム)(自立・要支援・要介護)、 グループホーム(認知症高齢者)(要支援2以上)
(4) 介護老人福祉施設(要介護)、介護老人保健施設(要介護)、 介護療養型医療施設(要介護)
分け方は、提供されるサービスが【「介護保険サービス」+「その他のサービス」】から見ると、「介護3施設」<「グループホーム」<「有料老人ホーム」<「サービス付き高齢者向け住宅」の順に位置付けされます。
2 居住部分の契約方法
(1) 利用権方式:居住部分と介護や生活支援等のサービス部分の契約が一体の方式(根拠法令なし)
(2) 賃貸借方式:賃貸住宅における居住の携帯方式で、居住部分と介護等のサービス部分の契約が別々の方式(根拠法令:借地借家法、高齢者の居住の安定確保に関する法律)
3 利用料の支払い方式
(1) 前払金方式:終身にわたって必要な家賃等(敷金除く)の全額(又は一部)を前払金として一括して支払う方式
(2) 月払い方式:前払金を支払わず、家賃等を月払いする方式(敷金は入居時に支払う)
(3) 選択方式:前払金方式、月払い方式のいずれかを選択できる方式(月払い方式は高額に設定されている場合があり)
4 有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の比較
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は、以下の表のとおり、基準や提供するサービスに違いがあります。
高齢者向け住宅の選定に当たっては、複数の有料老人ホーム・高齢者向け住宅等の情報を集め、施設の見学などを通じて、ていねいな説明を受けて、施設・サービス・費用等の比較検討し、最適な住まいを見つけることが重要となります。
5 「高齢者の居住状況」及び「一人暮らしの高齢者の介護場所の希望」は?
高齢者の住まいの現状は、9割以上が在宅です。要介護に認定の高齢者も約8割が在宅介護となっております。これから見ても、「できる限り自宅で住みたい」と希望する高齢者の方が多く、自宅等での転倒などを未然に防ぐために、バリアフリー化での改修対応を施す事例も多いところです。
それが難しい高齢者や一人暮らしの高齢者の介護場所の希望は、住み慣れた地域内において、介護施設や介護付き住宅を希望する方が増えています。
6 「地域包括ケアシステムの構築」とは?
こうした高齢者の住生活をめぐる現状と課題に対応するため、国が推進している「地域包括ケアシステムの構築」を推進しております。
これは、人口減少社会における介護需要の急増という困難な課題に対して、医療・介護などの専門職から地域の住民一人ひとりまで、様々な人たちが力を合わせて、対応していこうというシステムのことです。(2011年4月の介護保険法改正により義務化)
7 入居に必要な「連帯保証人」と「身元保証人(身元引受人)」を頼める者が身内にいない場合は?
ほとんどのサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム・介護施設では、入居時に「連帯保証人」と「身元保証人(身元引受人)」が求められます。
保証人には、家賃等の金銭的な連帯保証に加えて、緊急時の連絡先とその対応、入院時の治療方針の判断や入院時の諸手続き等の本人に代わって意思決定、身柄の引き取り、未払い債務の清算や遺品整理・処分など、多くの役割があります。
保証人には、配偶者や子供など親族がなるケースが一般的ですが、サービス付き高齢者向け住宅では、年齢や収入による審査で、親族で保証人が立てられないケースが少なくありません。
今回、ご案内した区内における「サービス付き高齢者向け住宅」では、入居者(79名)の平均年齢は85歳ですので、子がいる高齢者でも、子は60歳前後となり、子がいない高齢者は、兄弟姉妹も高齢者であり、施設運営者が求める「公的所得証明書」(源泉徴収票等)の所得額が審査に通らないのが現実となっています。
身内に保証人を頼める方がいない場合、連帯保証人・身元保証人(身元引受人)の役割を代行サービスを提供する団体・民間会社を利用せざる得なくなります。
弁護士・行政書士等の法律の専門家と連携して、連帯保証や身元保証に加えて、日常生活支援サービス、任意後見契約(公正証書)を締結しての財産管理、死後事務委任契約(公正証書)を締結しての葬儀・納骨まで、カーバーしている団体等もあります。
昨今、高齢化や核家族化が進み、身寄りがない、親族とは疎遠である等の理由により、保証人・身元引受人が立てられず、老人ホーム等に入居できないケースが増え、そのニーズに応えて、保証会社が増えています。
中には、提供するサービス内容に照らして、高額な費用を請求する事業者や、保証会社が倒産してサービスが受けれないなど、トラブルが増えており、現在、国は、高齢者住宅の入居について、制度設計等(ガイドライン制定等含む)に向けて、議論が始まったところです。
【徒然のひとこと】
当事務所は、高齢者支援として、上記の「老後の安心設計」の取組を2015年から継続的に取り組んでおります。
この取組に加えて、2022年から、高齢者の「サービス付き高齢者向け住宅等」の選定・入居・お引越しなどに関する総合支援のサービスをご提供しております。
何なりと、お気軽に、ご相談ください。