スマート農業で変わる、新たな農業ビジネスとは?


今、全国各地の産地において、水稲栽培や野菜栽培での「スマート農業」の導入・取組が、急ピッチで、進んでいます!

 

農業を取り巻く動向は、農業就業人口の減少と高齢化が進行している中、農地10ha以上の大規模農業者の割合が大きく増加しています。

  

こうした背景には、高齢化に加えて、従前型の農業機械による栽培形態では、小規模農業では採算性は望めないため、農業経営の継続を断念し、利用権設定により自己農地について、30歳代から40歳代の担い手に貸し出す農業者が増加しているためです。

 

この農地を借受て、周辺の農地をさらに集約化し、若い担い手である大規模農業者が、近年、増加しています。

 

当事務所が農業総合支援している南関東リア(千葉・茨城・埼玉・神奈川)においては、30歳代の農業者が、水稲・豆類・野菜など、多くの作物を通年を通して栽培し、農業所得が1千万円以上となる「新たな農業ビジネス」を展開しています。

 

今回は、当事務所が営農支援している農業者の「新たな農業の取り組み」の一部について、ご紹介します。

 

1 スマート農業の導入について

 

水稲については、農業所得を拡大するためには、令和4年産米の販売量・販売価格が停滞する中、生産規模を拡大しつつ、生産性の向上による生産費の削減が大きな課題となっています。

 

支援している農業者(水稲作付面積10ha)の営農計画は、令和3年産 米の生産費(10a当たり)が128,000円(全算入生産費)ですが、5年後の令和9年産の10a当たり米の生産費は、労働費・燃料費・施肥/農薬、減価償却費などを削減し、96,000円台を実現する取り組みです。

 

この生産費の削減を可能とするツールの一つが、スマート農業機械の導入及び関連のITツール・アプリの活用です。

 

「スマート農業」とは、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」のことで、今では、農業には欠かせない技術となっています。農業現場において、スマート農業の効果は、次の3点があげられます。

 

(1) 農作業の自動化

 

ロボットトラクター、スマホで操作する水田のほ場管理システム(衛星データ・気象データ・土壌データー・作物データ・施肥/農薬データ、収穫データ)などの活用により、作業を自動化し、ほ場条件にあった可変施肥・可変防除を行って、作業を最適化することによって、効果的な栽培を実現し、労働費を省くことが可能となります。 

 

(2) 情報共有の簡易化

 

ほ場の位置情報と連動した栽培管理アプリ(参考:アグリノート、ザルビオなど)の活用により、ほ場の状況や農作業の記録をデジタル化・自動化し、初心者でも生産活動の主体になることが可能となります。

 

(3) データの活用(衛星マップ機能、AI分析機能、各種連携機能(可変施肥、可変散布))

 

衛星(GPS)や農業用ドローンによるセンシングデータや気象データのAI解析により、農作物の生育や施肥の状況(生育マップ)、病害虫の状況・予測(病害アラートマップ)などにより、労力軽減や環境負荷の低減やコスト削減が可能となります。

 

特に、水稲栽培においては、生育ステージ別(分けつ期、幼穂形成期、穂ばらみ期、出穂期、登熟期(穂揃期・乳熟期・糊熟期・成熟期))ごとに、ほ場別の茎数・穂数の記録データと、衛星画像から、毎日、自動更新されるほ場別の生育マップ値を比較分析することによって、有効茎歩合改善のための計画に役立てることも可能となります。

 

現在、営農支援の農業者においては、「スマート農業」の導入により、農業経営の拡大及び効率化を推進し、「新たな農業ビジネス」を創出して、生産量の増大とともに農業所得の向上を図るため、今秋、下記のロボット技術を活用した最新技術搭載の機械を整備します。

 

さらに、来期には、高度な環境制御による栽培施設システム(モニタリング機器、複合・統合環境制御機器など)の導入を予定しております。

 

参考:スマート農業技術カタログ【耕種農業】(農林水産省 R5.6月更新版)(PDF)

 


【自動操舵トラクター】(イセキ BF50D)
【自動操舵トラクター】(イセキ BF50D)
【マップデータ連動可変施肥田植機】(イセキ PRJ8-FS)
【マップデータ連動可変施肥田植機】(イセキ PRJ8-FS)


【GPSアグリサポート連携コンバイン】(イセキ フロンティア454)
【GPSアグリサポート連携コンバイン】(イセキ フロンティア454)
【GNSS対応システム搭載】乗用管理機(丸山製作所 BSA-651)
【GNSS対応システム搭載】乗用管理機(丸山製作所 BSA-651)


2 農業用ドローンの導入について

 

今、スマート農業の一環として、農業用ドローンを活用した水稲栽培が注目されています。播種や栽培管理の省力化になることから、作付規模の拡大や新たな農業者の担い手対策としても効果的な取組となります。

 

現在、RTK(リアルタイム・キネマティック方式は、測位衛星からの位置情報を、地上にある「基準局(電子基準点)」と「移動局(ドローン)」の2箇所で取得)による高精度測位に加えて、毎日の生育状況をリアルタイムで取得できるセンシング技術などドローン活用をサポートする技術が開発されています。

 

農業用ドローンは、多くの用途で、多数販売されていますが、用途に合わせた最適な機種を導入して、労力の軽減と省力化、コスト低減を実現します。

 

【農業用ドローンの概要】

 

◆ 農薬・肥料用のタンクやノズルを搭載したドローンが、ほ場上空を飛行し、農薬・肥料を散布

◆ ドローンや人工衛星にカメラ等を搭載し、作物の生育状況をセンシング

 

【農業用ドローンの導入のメリット】

 

◆ 施肥作業時間及び防除作業時間の短縮

◆ 中山間地や急傾斜地等の人力での防除が困難な場所での防除作業の軽減

◆ センシングによりほ場内の生育バラツキや病害虫等の被害状況を把握し、可変施肥及び適地の農薬散布により、収量の増加

 

【農業用ドローンの主なメーカー】(農林水産省ホームページより)

 

【農業用ドローン機体】

 

イームズロボティクス(株)、XAG JAPAN(株)、KMT(株)、サイトテック(株)、ソフトハンク・テクノロシー(株)/(株)石川エナシーリサーチ、TEAD(株)、東京ドローンプラス(株)、東光鉄工(株)、(株)ナイルワークス/住友商事(株)、(株)FLIGHTS、(株)マゼックス、(株)丸山製作所、ヤマハ発動機(株)、(株)クボタ

 

【農業用ドローンと連携したサービス】

 

(株)エアリアルワークス、(株)オプティム、(株)サイバネテック、(株)スカイシーカー、(株)スカイマティクス、(株)ズコーシャ、ソフトハンク・テクノロシー(株)/RaveProject/Skylink Japan、ドローン・ジャパン(株)、(株)日立システムズ、ヤンマーアグリジャパン(株)

 

水稲栽培における導入事例は、次のとおりです。

 

(1) 直播

 

ドローンを活用した直播では、粒剤散布装置を搭載した農業用ドローンを高度1.5m程度で飛行させ、湛水状態のほ場に水稲の種子を播きます。

 

種子の播きムラを最小限に抑えるため、また、鳥害等の発生防止のために、鉄コーティング種子を用います。さらに、土中打ち込み播種機を搭載すれば、条をつくりながら直播が可能となります。

 

この農業用ドローンによる直播は、移植栽培(苗床(は種)と田植え等)と比べ、作業時間が大幅に短縮可能と生産コストの削減となり、作付面積の規模拡大が可能となります。

 

 (2)農薬散布

 

農薬散布に農業用ドローンを活用する散布面積は、年々、拡大傾向にあります。

 

無人ヘリコプターと比較すると、飛行持続時間や農薬の搭載量が少ないのは課題ですが、農業用ドローンは、価格帯は80万円~300万円と導入が可能であり、低空飛行で農薬散布すると、無人ヘリコプターと変わらない防除効果が期待できます。

 

加えて、農業用ドローンは、小回りが利き、中山間地など狭いほ場や形状が複雑なほ場でも、効果的に農薬が散布できるのがメリットとなります。 

 

なお、農業用ドローンについて、ご関心の方は、当事務所に、お問合せください。


事例:農林水産省ホームページ「農業用ドローン」より
事例:農林水産省ホームページ「農業用ドローン」より

【徒然のひとこと】 


農業を取り巻く状況は、大規模農業者が主体となって、生産規模が大きく変わっています。

 

南関東エリアでは、従来の小規模の個人農業者から、農地10ha~20ha の大規模農業者が占める割合は50%を超えています。

 

これは、当事務所が営農支援している農業者も、令和5年作から水稲作付面積5ha規模から10ha規模へと作付けを拡大しています。

 

作付面積の規模拡大とスマート農業による生産展開により、労働費・肥料費・農薬費・資材費・減価償却費の削減を実現し、水稲の10aあたり生産費(令和7年産)は、97,000円を目標としています。

 

併せて、水田の裏作(12月~4月)として、ブロッコリー(3.5ha)とサニーレタス(2.7ha)などを栽培し、水稲+野菜の農業収入の合計は4,100万円を見込み、農業所得は1,300万円を見込んでいます。

 

上記の取組に係る資金は、制度資金(農業経営基盤強化資金等)の利用となりますが、融資審査のためには、営農計画書の作成がポイントとなります。

 

当事務所では、農業に係る総合的な知見等に基づく営農計画のプロフェショナルとして、完成度の高い営農計画書を提供させて頂いております。

 

新たな農業ビジネスの展開にご関心の方は、お気軽に、お問合せをお願いします。