今、国産林が注目されています!



今 、国産木材が注目されています。

 

2021年10月1日に「脱炭素社会を実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法)が施行されたこともあり、今、国産材が大きく注目されています。

 

法律の趣旨は、国内にある豊富な森林資源の活用は、災害防止に役立ち、地球温暖化を誘引する二酸化炭素削減にも貢献できることから、国は木材自給率を50%以上を目標に、森林環境を守り循環していくため、国産材の利用を推奨するところにあります。

 

コロナ等による「ウッドショック」での外国材の高騰もあり、一部の住宅メーカーでは国産材の活用が始まりつつあります。 

 

それでは、国産材の経緯・特徴・現状を見てみましょう。

 

今、日本国土における人工林(全体の41%)のスギ、ヒノキの割合は、スギが44%(444万ha)、ヒノキが25%(260万ha)、その他31%(317万ha)となっています。

 

国土の7割近くが森林の日本では、古くから、木や森に囲まれて、生活が成り立ってきました。森林は、木材の供給だけでなく、木の実やきのこ類は、食料として、また、落ち葉や樹皮は、燃料としても活用されてきました。

 

また、木材は、耐久性があり、加工性もよく、軽くて強いことから、建物の建築材料としての活用され、構造材としての利用だけでなく、内装材や工具・食器などにも、広く利用されています。

 

加えて、ヒノキ(桧)の香りは、鎮静作用と強壮作用があり、気持ちが落ち着き、癒し効果(リラクゼーション効果)を導くことでも知られています。

 

特に、国産材は、高温多湿で雨量の多い夏など、四季の寒暖差のある気候と風土などの環境で育つ木は、木目が真っすぐで、年輪の間隔が狭く、耐久性に優れ、木目が美しく、高品質の仕上げができる特徴があるところです。

 

国産材のヒノキは高い評価ですが、国産材の利用についてみると、国策により、昭和30年代に、スギ・ヒノキの植林が進み、スギ・ヒノキの山は増えていきましたが、伐期(樹齢65年~70年)ではないことなどから、伐採・搬出・利用・流通量が少ない状況が推移していました。

 

そうした中、国産材のみでは、まかないきれない状況から、1964年(昭和39年)の木材輸入の全面自由化により、コスト面で優れた外国産材の供給量が大幅に増加(1996年が輸入量のピーク)した経緯です。

 

このことは、国産材の供給において、上記の理由に加えて、零細な木材供給者の労力事情等も要因の一つでした。

 

しかし、最近では、コロナ感染・コンテナ不足・輸送の停滞などによる「ウッドショック」(2021年)で木材不足が深刻化し、外国産の木材価格が高騰し、国産材の需要が増加傾向となっています。 

 

それでは、木材供給量と木材自給率について、昭和30年~令和3年の推移を見てみましょう。

 

林野庁(下図「木材供給量及び木材自給率の推移」)によると、木材自給率は、2011年から12年連続で上昇し、2021年は41.1%になり、40%台を超えています。

 


(資料:林野庁「木材供給量及び木材自給率の推移」)
(資料:林野庁「木材供給量及び木材自給率の推移」)

 次に、木材需要量について、平成11年~令和3年の推移を見てみましょう。

 

木材需要量は、令和3年の木材需要量は前年より800万㎥増加し、令和元年の水準(8200万㎥)にほぼ回復。 【下図 参照】

 

また、令和3年の国産材利用量は、全ての用途(製材、合板、バイオ・チップ、燃料材)で増加し、製材用材、合板用材、パルプ・チップ用材は、おおむね令和元年の水準に回復、燃料材は 更に増加しています。

 

2021年6月に策定された「森林・林業基本計画」では、2025年(令和7年)国産材の需要量目標は、令和3年実績の500万㎥増の8700㎥を見込んでいます。

 

背景には、昭和30年代に植林したスギ・ヒノキが伐採適期を迎え、供給量の増加が需要量の増加を導くことによります。

 



次に、立木の現地に置ける伐採する長さ(単位)について、見てみましょう。 

 

木材は、木の値段を体積(1立方メートル=1m×1m×1m)立法メートル単位で表記して、価格を算出します。

 

山に植林の木は、まずチェーンソーで伐り倒し、約2~4ⅿ単位の丸太にカットします。なぜ、2~4mかというと、建築材の規格(1尺=1.82m、2尺=3.64)に合わせる必要からです。

 

樹齢約70年の木の高さは平均約20メートルです。1本の木から4メートル丸太は、約4本取れます。丸太は、根本の方から元玉(もとだま)、二番玉、三番玉と呼びます。根本の方は、枝打ちをしている場合は、節が少なくことから、元玉と二番玉は、原木市場に売ります。

 

三番玉以降は、バイオマス発電所に売ります。さらに伐採したことを役場や森林組合に届けると、一定の条件のもと、補助金の交付もあります。

 



 

それでは、立木の価格について、見てみましょう。

 

山元立木価格(やまもと りゅうぼく かかく)とは、林地(森林)に立っている木の価格のことで、木から生産される丸太の材積(利用材積)当たりの価格で示します。

 

最寄の木材市場の売渡し価格(素材価格)から、伐採や運搬等にかかる経費(素材生産費等)を差し引くことにより算出します。

 

これは、森林所有者の収入に相当します。山元立木価格は、他の木材価格と同様に、昭和55(1980)年をピークに下落した後、近年はほぼ横ばいで推移しています。

 

令4(2022)年3月末現在の山元立木価格は、ヒノキが51.9%増の 10,840円/m3(令和3年は7,137円/m3)で上昇しています。

 

木材価格でみると、令和4年3月末現在の丸太(製材用・中丸太)は、ヒノキが50.6%増の25,900円/m3(令和3年は17,200円/m3)で、立木価格と同じく上昇しています。

 

今後の木材価格は、需要増などから、ウッドショックの2021年より、やや上昇傾向が見込まれています。

 




 

それでは、製材の価格について、見てみましょう。

 

製材価格(ヒノキ正角)は、丸太の価格下落動向とは異なり、令和3年現在では、132,500円/m3と昭和55年以来の高値で推移しています。

 

一方、山の林地価格は、平成2年以降、下落傾向が続き、令和3年現在では、41,080円/10a当りで、平成2年比較で、▼52.3%減と大幅に下がっています。

 




 

今後の国産材の木材価格については、上昇傾向がみられているものの、輸入材や国際状況が不安定であることから、今後も予断を許さない状況であることには変わりません。

 

しかしながら、短期的な価格動向のみで、伐採適期となっているスギ・ヒノキを伐採しないことは、森林環境を守り、循環して森林を育てる観点からは、伐採を先延ばしにすることは避けなければなりません。  

 

自然災害や山崩れなどによる森林消失や過度の伐採による森林荒廃について、私たちの先人は、森林を保護して、再生する重要性を理解していたところです。

 

私たちも、先人たちの努力によって守られてきた日本の森林について、国産材を積極的に利用しつつ、伐採後は人口植林して、次の世代に、豊かな森を整備していくことが求められています。

 


【徒然のひとこと】 


 

国産木材をブログの記事とするきっかけは、山を所有する方から、下記の案件について、相談があったことによります。

 

相談内容は、相談者の実家が植林しているヒノキが、電気事業者が施設している送電線に接近しているため、関係法令等に基づき、該当範囲のヒノキの伐採について、当該電気事業者から通知があったことについての相談でした。

 

その通知内容をみると、根拠法令等は「電気事業法第61条に基づく植物の伐採等に関する指針」 (令和2年6月:経済産業省)で、伐採の要件として、次の場合には伐採できる旨が示されたようです。

 

(1) 植物等による電線路への障害(最小絶縁間隔を保つことができない場合も含む)

 

(2) 障害の放置による電気供給への重大な支障(電気の正常な供給義務の履行が不可能となる場合も含む)、又は、公共の安全阻害(火災の発生のおそれ等を含む)

 

要約すると、樹木等が送電線に支障を及ぼす状況があれば、電力の安定供給や公共の安全確保のために、伐採が可能となる規定とのことです。

 

相談された内容によると、対象範囲ののヒノキは樹齢65年で、ヒノキの伐採適期であることや、上記の公共の安全確保の理由から、同意せざる得ない状況であったようです。

 

しかし、伐採したヒノキの搬出・輸送ができないため、伐採した木を放置せざる得ないことから、伐採後の対応が相談の主な内容であったところです。

 

伐採について、樹齢・直径等による一定の補償はあるものの、伐採したヒノキの原木は、現地に集積・筋置きに留まり、搬出・輸送はしない条件だったようです。

 

このため、林地所有者は伐採した木材をそのまま放置するか、または、自らが搬出・運搬の林業事業者を見つけ、買取交渉をする必要となります。

 

しかしながら、管理も行き届かない零細な林地所有者では、伐採・搬出・運搬ができる林業事業者を確保できず、放置せざる得ない場合も少なくはないようです。

 

伐採することによる問題は、豪雨による土砂災害や木材が流れてしまう二次災害も引き起こす原因となるなど、自然災害の発生の要因となります。

 

また、放置された原木による問題は、いずれ腐敗して自然に還りますが、分解しきれなかったメタンガスは大気中に蓄積し、大気汚染を生じさせることにもなります。

 

このメタンガスは、二酸化炭素の次に影響の大きい温室効果ガスであり、同量であれば、二酸化炭素の21~72倍の温室効果を持ちます。

 

伐後後に放置された原木は、発酵して、このメタンを生成します。少量であれば、土中や空気中の自然な化学反応で分解されますが、排出量が増えすぎて、分解が間に合わなくなった場合には、大気中に蓄積してしまい、温室効果を高めることになります。

 

また、立木の状態であれば、水分量の少ないヒノキでは、メタンガスが吸収され、地球温暖化で問題とされる二酸化炭素削減にも貢献し、その防止に役立っているところです。

 

逆に、伐採したヒノキを放置すると、メタンガスを発生し、地球温暖化の一因になるわけです。

 

以上のことから、伐採する場合には、伐採木の放置の選択肢はなく、伐採後の搬出・運搬・買取までの林業事業者を確保することが必須となりますと、助言させて頂いたところです。

  

当事務所は、農業に加えて、林業に関することも、ご助言させていただいております。

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