相続登記の申請が義務化されます!



2021年4月に「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立・公布されたことについて、ご存知でしょうか?

 

これは、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化の両面から総合的に関係法令を見直したものです。

 

特に、私たちにとって知っておかなければならないのが、2024年4月から「相続登記の申請義務化」です。

 

相続登記の義務化をめぐる背景と問題点について、見てみましょう。

(以下、法務省民事局の資料「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」の抜粋)

 

◆ 背景

 

○ 相続登記の申請は、相続人の義務でなく、申請しなくても不利益を被ることは、少ない。

 

○ 都市部への人口移動や、地方での人口減少・高齢化の進展等により、地方を中心に、土地の所有意識が希薄化。

 

○ 遺産分割をしないまま、相続が繰り返され、土地の共有者がねずみ算式に急増。

 

◆ 問題点

 

○ 所有者の探索に多大な時間と費用が必要。(戸籍・住民票の収集、現地訪問等の負担)

 

○共有者が多数の場合や一部所在不明の場合、土地の管理・利用のために必要な合意形成が困難。

 

 ➡ 公共事業等が円滑に進まず、民間取引が阻害されるなど、土地の利活用が阻害。

 ➡  土地が管理不全化し、隣接する土地への悪影響が発生。

 ➡ 今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、相続登記されない土地(所有者不明土地)が急増。

 

こうした背景と問題・課題に対して、令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」、令和3年4月28日に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立・公布(令和3年4月28日)されました。

 

 

この二つの法律により、相続による所有者不明土地の「発生予防」と「利用の円滑化」の両面から、次の3つの見直しが行われます。

 

1 相続登記がされるようにするための「不動産登記制度」の見直し

◆ 相続登記・住所等の変更登記の義務化及び手続きの簡素化・合理化

 

2 土地を手放すための制度の創設(相続土地の国庫帰属制度)

 

3 土地利用に関する民法のルールの見直し

◆ 土地・建物に特化した財産管理制度の創設

◆ 共有地の利用の円滑化」など共有制度の見直し

◆ 遺産分割に関する新たなルールの導入

◆ 相隣関係の見直し

 

制度の内容は、次のとおりです。 

 



【不動産登記制度の見直し】

 

1 相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行)

 

◆ 基本的なルール

相続によって不動産を取得した相続人は、 その所有権を取得したことを知った日から3年以内、相続登記を申請しなければならない。

※ 正当な理由がないのに申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料対象となります。

 

2 相続人申告登記(令和6年4月1日施行)

 

新しく「相続人申告登記」が設けられました!

これは、従前の「相続登記」とは異なって、申出をすると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されますが、持分の割合まで登記されないので、全ての相続人を把握するための資料は必要ありません。

 

3 所有不動産の記録証明制度(令和8年4月までに施行)

 

これは、被相続人(亡くなった親など)が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が新たに設けられました。

 

4 住所等の変更登記の申請の義務化(令和8年4月までに施行)

 

これまで不動産登記の所有者の住所等の変更登記の申請は任意とされており、転居されても住所の変更登記はされないケースが少なくありませんでした。そこで、所有者不明土地の発生を予防するために、住所等の変更登記の義務化です。

 

この住所等の変更登記は、他の公的機関(個人の場合は住基ネット、法人の場合は商業・法人登記)との情報連携により職権で変更登記がされる仕組みです。(個人の場合には、本人の了解がある場合に限定)

  

以上が、「不動産登記制度の見直し」の概要です。

  



【相続土地の国庫帰属制度の創設】 (令和5年4月27日施行)

 

◆ 制度の仕組み

所有者不明土地の発生要望の観点から、 相続等によって土地の所有権を取得した相続人が、法務大臣(窓口は法務局)の承認により、土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度が新たに創設されました。

 

申請できる者は、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人であれば、申請できます。

(売買等によって任意に土地を取得した方や法人は対象となりません)

 

なお、どんな土地でも引き取ってくれるのではなく、国庫帰属が認められない土地の要件は、今後、法令等で定められる予定です。

 

現時点、次のような管理又は処分をするにあたって、過大な費用や労力が必要となる土地は対象外とのことです。

 

★ 建物・工作物・車両等がある土地

★ 土壌汚染・埋設物がある土地

★ 危険な崖がある土地

★ 境界が明らかでない土地

★ 担保権等の権利が設定されている土地

★ 通路など他人による使用が予定されている土地

 

◆ 手続きに係る費用について

 

申請時に審査手数料の納付と、国庫への帰属の承認を受けた場合には、負担金(10年分の土地管理費相当額)の納付が必要となります。 

具体的な金額や算定方法は、法令等で定められる予定です。 

 

以上が、「相続土地の国庫帰属制度の創設」の概要です。

 



【民法のルールの見直し】

 

 1 土地・建物に特化した財産管理制度の創設(令和5年4月1日施行)

 

土地・建物の効率的な管理を実現するために、 所有者が不明であったり、所有者による管理が適切にされていない土地・建物を対象に、個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度が新たに設けられました。

  

◆ 見直し内容の概要

 

★ 「所有者不明土地・建物の管理制度」及び「管理不全状態にある土地・建物の管理制度」

 

調査を尽くしても、所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係者が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人の選定が可能となりました。

 

この管理人は、裁判所の許可を得れば、所有者不明土地の売却等もできる制度となります。

 

2 共有制度見直し(令和5年4月1日施行)

 

【見直しの背景】

共有状態にある不動産について、所在等が不明な共有者がいる場合には、その利用に関する共有者間の意思決定をすることができなくなったり、処分できずに公共事業や民間取引を阻害するなど問題が指摘されています。そこで、共有の不動産の利用や共有関係の解消をしやすくする観点から、共有制度の見直しが行われました。

 

◆ 共有物を利用しやすくするための見直し

 

★ 共有物につき、軽微な変更の要件を緩和(全員の同意は不要で、持分の過半数で決定可)

 

★ 所在等が不明な共有者がいる場合には、他の共有者は、地方裁判所に申し立て、その決定を得て、残りの共有者の持分の過半数で、「管理行為」ができます。

 

★前記と同様に、残りの共有者全員の同意で、「変更行為」ができます。

 

 ◆ 共有関係の解消をしやすくするための新たな仕組みを導入

 

★所在等が不明の共有者がいる場合には、他の共有者は、地方裁判所に申し立て、その決定を得て、所在等が不明な共有者の持分を取得してり、その持分を含めて、不動産全体を第三者に譲渡することもできます。

 

以上が、「民法のルール見直し」の概要です。

 



【遺産分割に関する新たなルールの導入】

 

  「遺産分割がされずに、長期間放置されるケースの解消を促進する仕組み」の新たに創設(令和5年4月1日施行)

 

【導入しの背景】

 相続が発生してから遺産分割がされないまま、長期間放置されると、以後、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となる結果、遺産の管理・処分が困難となります。

 

また、遺産分割がされずに、長期間放置すると、具体的な相続分関する証拠等が確認できず、遺産分割が難しくなる問題が少なくありません。そこで、遺産分割されずに、長期間放置されるケースの解消を促進する仕組みが新たに設けられました。

   

◆ 新たな仕組みの概要

 

★ 「長期間経過後の遺産分割のルール」

 

被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的な相続分を考慮せず、法定相続分又は指定相続分によって画一的に行うこととされました。

 

新たなルールは、改正法の施行日前に開始した相続にも適用されます。その場合、施行時から5年間の猶予期間が設けられます。

 

以上が、「遺産分割に関する新たなルールの導入」の概要です。


【相隣関係の見直し】

 

  「隣地使用権のルール見直し」(令和5年4月1日施行)

 

【導入しの背景】

 

隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合には、隣地の所有者から隣地の利用や枝の切取り等に必要となる同意を得ることができないため、土地の円滑な利活用が困難となります。

 

そこで、隣地を円滑・適正に使用することができるようにする観点から、相隣関係に関するルールの見直しが行われました。

   

◆  隣地使用権のルールの見直し

 

境界調査や越境状況の竹木の枝の切取り等のために隣地を一時的に使用できることが明らかにされるとともに、隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合にも、隣地を使用することができる仕組みが設けられました。

 

◆  ライフラインの設備の設置・使用権のルールの整備

 

ライフラインを自己の土地に引き込むために、導管等の設備を他人の土地に設置する権利や、他人の所有する設備を使用する権利が明らかにされるとともに、設置・使用するためのルール(事前の通知や費用負担などに関するルール)も整備されました。

 

◆  越境した竹木の枝の切取りのルールの見直し

 

 

隣地の所有者に催促しても越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその存在を調査しても分からない場合等は、越境された土地の所有者は自らその枝を切り取ることができる仕組みが整備されました。

 

以上が、「相隣関係の見直し」の概要です。

 


【徒然のひとこと】 

相続&登記の新ルールについて、身近な重要な内容が来春から大きく変わります。

 

特に、遺産分割できずに、結果として放置しているケースでは、遺産分割の請求期間が10年間限定(猶予5年)により、早急に対応しないと、遺産分割できない事態となってしまいます。

 

これらの状況にある方は、相続・登記などに精通した専門家への依頼をお勧めします。

 

当社グループは、土地・建物の相続・登記などについて、フルサポートで、ご支援しておりますので、お気軽にご相談ください。