コロナ禍が続く中、自然環境で暮らす・働く農業について、ご相談が多く寄せられています。
なかでも、「施設園芸農業」での新規就農のご関心が高く、栽培品目・就農地域や給付金等申請について、ご支援をしております。
施設園芸農業の魅力は、1年を通じて、安定的に栽培ができることから、高収益・高付加価値の農業経営が可能であることです。
1 施設園芸農業をめぐる状況
農林水産省の「施設園芸をめぐる情勢」(2020年5月)によれば、【野菜・果樹・花き】の園芸作物は、生産面では、我が国の農業産出額の約4割(2兆3,212億円)を占めるとともに、自らの工夫で高付加価値化できることから、新規就農者の85%が中心作物として選択する重要かつ魅力ある分野です。
消費面からみると、食料の支出金額に占める割合が最も高く、私たちの毎日の食生活上、最も重要な品目であります。また、消費者ニーズに応えるためには、施設園芸による1年通じての通年安定供給が必須であります。
施設園芸農業は、ビニールハウスやビニールトンネルなどの小規模な施設から、ボイラー等の加湿設備・冷却設備を備えた大規模の施設まであります。現在では、簡易な施設から温室へ、さらには、温室内の環境を制御できる装置の導入へと高度化が進んでいます。
温室の設置面積は、全国でみると、農業従事者の高齢化等に伴って、近年減少傾向にありますが、農林水産省の「園芸用施設の設置等の状況(2018年)」によると、42,164ha(ガラス温室1,595ha・ハウス40,569ha)です。
そのうち、設備や装置の導入状況をみると、加温設備を備えた温室は約4割、養液栽培施設・炭酸ガス発生装置・複合環境制御装置など高度な設備を備えたカ所は数%となっており、導入が進んでいないのが現状です。
今後は、天候に左右されずに、野菜等の安定供給を確保するとともに、生産性向上と高収益な農業経営を図るためには、高度な環境制御装置を備えた温室の導入が必要な状況であります。
2 栽培方法
施設園芸農業は、気象環境などを人工的に制御し、植物の生育制御を行い、出荷時期を早めたり(促成栽培)、遅くしたり(抑制栽培)、また、施設設備を利用して、通年を通じて栽培出荷が可能となる栽培形態です。
最も多く取り組んでいることは、施設内の温度を調整・制御することで、栽培を可能にすることです。加えて、日照条件・湿度・二酸化炭素濃度・通風・肥料割合などをコントロールする設備を有した施設をあります。
以上、施設園芸の最大の特徴は、環境制御機能を有した施設において、この機能を最大限生かして植物を育成・栽培し、生産効率を高めていく農業です。
3 施設園芸のメリット
【収穫量の安定及び高品質作物の栽培】
露地栽培と異なり、栽培環境を自らコントロールできるので、季節の影響を受けずに、野菜・果樹などが栽培でき、年間を通じて安定した収穫量が確保できます。加えて、市場価値の高い高付加価値の作物(野菜・果樹)を選び、高品質な作物を栽培すれば、収入も増加し、安定した農業経営が実現できます。
【病害虫等の被害の軽減】
ガラス温室やビニールハウス温室の人工的な環境は、病害虫や病原菌の侵入を阻止することが可能であり、適正な土壌管理等もされている施設では、無農薬栽培も可能となります。
4 施設園芸のデミリットと対策
【施設整備の設置コスト高い:農業経営費に占める割合が大きい】
施設園芸農業は、施設に多様な生産設備を備えた農業栽培形態です。作物の特性や生育時期による制御が必要であり、温度・湿度・日照・通風・液肥・土壌殺菌などの制御装置(コンピューター管理制御装置)の設置費用と施設本体の建物費用が必要となります。
これらの設置費用と建築費用については、適用条件はありますが、国等の助成金制度を利用しての導入を図る必要があります。
【生産費に占める燃料費の割合が大きい】
施設園芸農業では、保温等のための燃料が大量に必要となります。このため、光熱動力費の割合が生産費のうち約4割を占めるとの試算があり、燃料費の価格変動が生産費に大きき影響し、収益の不安定要素・リスクとなっています。
このため、省エネ型のヒートポンプや断熱効果の高い被覆素材の利用、再生エネルギー(バイオマス・太陽熱)による燃料コストの削減し、収益性の向上を図る必要があります。
この対策を推進するために、国は「強い農業づくり交付金」などの補助金や次世代施設園芸技術習得支援、施設整備コスト低減、災害への対応どで、施設園芸農業を支援を用意しており、自治体の支援や地域で共同して取組み事例もあります。
【台風等自然災害による施設の被害対策】
施設園芸農業は、台風等の自然災害による施設の倒壊やガラス・ビニール等被覆素材の破損などが発生するため、被害を最小限に抑えるための対策の措置が必要となります。
5 施設園芸農業において、高収益の農業経営を実現するポイント
(1)交付金・補助金等の活用により環境制御技術・再生エネルギーを導入し、低コスト・省力化で生産費(光熱費)の削減を図ること。
(2)栽培作物の通年栽培、高品質化(ブランド化)による販路開拓・収入拡大を図ること。
施設園芸農業は、露地栽培より収益性が高く、新規就農の関心が高い農業です。これを実現するためには、園芸作物の栽培技術の習得とともに、農地・施設の確保には、関係者の支援と資金が必要となります。
栽培技術の習得には、国の新規就農の研修制度等を利用して、チャレンジすることももできます。
これからの施設園芸農業は、国や自治体等の支援を活用して、環境制御の自動化に取組み、スマート農業と組合わせることによって、収益性の高い農業経営の実現ができると確信しています。
【徒然のひとこと】
コロナ禍が続き中、ジャガイモ(春植えばれいしょ)の植付け(5a)をしようと、園芸店に種芋の購入に行ったところ、「今年は天候不順で2月中旬以降、種芋の入荷なし」って、驚き!でした。
これまで、北海道など産地の天候不順で、品薄の年はありましたが、2月の時点で、入荷がないのは、初めてです。全国的な異常気象が影響しているようです。
毎年、必ず、自家用で栽培していた「ジャガイモ」が植付けできず、やむなく、「サトイモ」に変更し、植付けが完了しました。収穫は10月の予定です。
また、昨年の11月に定植(3a)した「タマネギ」は、生育良好で、6月の収穫が楽しみです。
毎日の食事の食料について、自分で栽培・収穫できることは、感激です!
みなさんも、自然環境の中で、農業に親しみませんか?
きっと、素晴らしい感激と感動が得られるはずです!