不動産競売(けいばい)物件って、ご存じでしょうか?
裁判所の競売物件は、これまで、「一般市場価格より安いが、リスクが大きいので、手を出さないほうがいい」と言われてきましたが、実際には、どのなのでしょうか?
裁判所の競売物件に「農地」が含まれている場合には、事前に農業委員会から「買受適格証明書」(農地法3条(又は5条)許可申請) が必要なため、農業に強い当事務所が、この申請手続きのご依頼と併せて、不動産競売手続きのご支援もさせて頂いております。
競売物件は他の物件と比較して、安い価格で設定されている場合が多く、落札できれば、市場価格から3割~5割程度安く(東京都等首都圏一部地域物件除く)、物件を購入できます。また、最近では、「BIT 不動産競売物件情報サイト」(最高裁判所裁判所公式サイト)から競売情報をいち早く入手できることから、競売物件の入札手続きに関するご相談が多く寄せられております。
当事務所は、ご相談を頂いたとき、競売物件の概要と注意すべき下記の事項について、十分な説明をさせて頂いております。
1 競売物件の概要
競売物件とは、支払い義務者である「債務者」が債務を返済することができなくなったため、不動産を民事執行法の規定に基づき、売却して、それで得た代金を債権者に配当して、債務の返済に充てる強制手続きです。
不動産の所有者(占有者)の意思に沿うものでない点が、通常取引における「売買」と大きく異なるところです。
裁判所の競売物件には、担保不動産競売事件と強制競売事件の2種類があります。
担保不動産競売事件は、不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きで、事件番号の符号が(ケ)と表示され、競売物件の多くは、この(ケ)です。
一方、強制競売事件は、判決や裁判所の和解・調停・法令等で決まった内容等の実現するための手続きであり、事件番号の符号が(ヌ)と表示されます。
競売物件は、抵当権を設定している不動産や固定資産税の課税対象不動産など、どんな不動産も対象となるため、一般不動産(土地・建物・マンション等)はもちろんですが、次の事例のような買受け後に、引渡命令・訴訟等の法定手段が必要となる不動産も競売物件の対象に含まれてます。
事例としては、「(1)法令上の規制により建物が建てられない土地、(2)買受け後、直ちに取壊して敷地を明け渡さなければならない土地、(3)買受け後も、賃料を受ける利益しかない土地・建物、(4)金融機関の融資が受けられない土地・建物」なども、競売の申立があると、法律上、売却に支障がない限り、競売の対象となります。
このため、特に注意したいことは、競売は、裁判所が物件の品質等を保証するものではなく、物件の所有者や占有者は、自己の意思に反して強制的に売却されるわけですから、買受け後の物件の引き渡し等において、協力を得られない場合も少なくはありません。
債権者から入札の申立てを受けると、裁判所は、現地に執行官を派遣し、現地調査を行った後に、前述のリスクを総合して、競売市場修正(減価)として、売却基準価額を決定しております。
その現地調査結果が入札公告の内容として「物件明細書・現況調査報告書・評価書」(一般に、「3点セット」と言われてます)が閲覧できますので、入札に関心のある者は、この調書を読み取れることが必須となります。
3点セットとは、なに?
裁判所の競売物件情報閲覧室やBIT不動産競売物件情報サイトで見れる「物件明細書・現況調査報告書・評価書」のことです。
◆物件明細書とは?
競売の対象となる物件を特定するための情報や、売却条件等の情報が記載された資料で、物件の所在地・面積・権利関係・占有状況・物件目録・入札の基準となる売買基準価額等
◆現況調査報告書とは?
対象物件の項目別状況・占有者及び占有権原・関係人の陳述等・調査の経過・関係図面・現況写真等
◆評価書とは?
物件位置環境や法的規制に関するデータ及び売却評価額算出の過程等が記載されている資料
2 競売に至るまでの流れ
それでは、競売に至るまでの流れについて、ご説明します。
一般的な金銭債務(住宅ローン)で不動産(土地・一戸建て・マンション等)に抵当権設定されてる場合、期日に返済がされていないことを確認すると、債権者は債務者に対し「通知」、通知後も返済がない場合には「催促状」、それでも返済が確認できない場合には、債権者から競売の申立を受けるものが大半です。
住宅ローンを支払えなくなったとき、「任意売却」によって不動産を処分する方法もありますが、所有者が任意売却を選択しない場合や、任意売却しようとしても不調に終わった場合、債権者(金融機関・保証会社等)は、間髪入れずに、「競売」手続きに入ります。
3 競売の流れ
裁判所は、債権者からの「申し立て」を受け、「競売の開始・物件の差押通知」を行い、現地に執行官を派遣し、現地調査を行った後に、前述の3点セットを添付し入札公告がされ、入札期間は約1週間です。
競売物件の入札資格は、特別な参加資格は不要(債務者には入札参加資格がない)ですが、競売物件に農地が含まれている場合には、買受適格証明書(農地法3条(5条)許可申請書類に加えて、耕作証明書が提出可能な農業従事者)の提出が入札参加の条件です。
4 競売の入札
公告日から入札開始までは3週間~4週間程度であり、この期間に当該物件を調査し、入札するか否かの判断することになります。
入札には、期間入札と特別売却の2つの方法があります。(特別売却の方法は説明略)
期間入札は、一定期間中に入札を受け付け、開札期日における開札の結果、買受可能額(売却基準額からその10分の2に相当する額を控除した価額)以上で最も高い金額を入札した人を最高価買受申出人に指定し、売却決定を受ける資格を付与する方法です。
入札の際には、買受申出保証金(通常、売却基準額の10分の2相当)が必要となります。最高価買受申出人と次順位買受人以外が納めた保証金は、開札後に全額返還されます。
入札においては、「入札書・入札用封筒・入札保証金振込証明書」が必要です。入札書(期間入札)には、事件番号・物件番号・入札価額・入札人(住所・氏名)を記載して、入札します。なお、郵送も受付してます。
入札結果は、「BIT 不動産競売物件情報サイト」に開札結果・売却価額(落札額)・入札者数・落札者資格が公表されます。(入札者がいない場合は、「不売」として流れます)
その後の手続は、不服申立ての期間1週間後に「売却許可決定」が確定し、残額を納付(1ヶ月以内)すると、買受人名義に所有権移転登記がされ、登記識別情報通知書が執行裁判所から買受人に郵送されます。
5 買受後について
裁判所は登記簿の上で所有権の移転手続き(抵当権抹消手続き含む)をするだけであり、一般の不動産売買でいう「引渡し」をしてくれません。
競売物件には「売主」がいないため、売主からの物件の引渡し義務は発生せず、債務者から買受人への引渡しとなります。この債務者からの引渡しについて、いかにスムーズに行えるかがポイントとなりますので、入札する前の調査が最重要となります。
買受け後のトラブル(債務者・占有者が立ち退かない、物件自体の問題、賃借権などの権利、残置物(前所有者等の持ち物)の処分、近隣とのトラブル等)は、裁判所が仲介責任を負うことはなく、自ら法的手段も含めて、明け渡し交渉し、解決しなければなりません。
このため、競売物件は、これらのリスク管理(対策費と処分費等)を備えて臨む必要があります。
例えば、引渡し(猶予期間6ヶ月以内)に応じない場合の措置について、どうするか、(1)賃料をとって引続き住ませる、(2)裁判所に申し出して強制執行の法的手段、(3)その他の方法、など、事前に対応策(対策費も含めて)をトレースして臨む必要があります。
いすれの方法をとっても、3ヶ月~6ヶ月以上かかると見込んでおく必要があり、また、競売物件に精通したサービス支援を利用するのもリスク軽減となります。競売物件は、評価が相場より低いほど、リスクは高くなります。
競売物件の事前調査が、そのリスク管理とリスク対策の決め手になります。そこに競売物件の良し悪しが読み取れる助言者が必要となりますので、競売物件にご関心の方は、ご留意願います。
徒然のひとこと
競売物件は、そのリスク対策ができれば、大きなメリットがあります。物件種目は多く、居住用の物件や不動産投資に向いている物件、事務所テナント、倉庫、農地など、多種・多様な物件であり、また、建物はリフォームして売却すれば、大きな収益も得ることができます。
良質で優良な物件をいかに的確にセレクトでき、入札・落札できるかは、競売物件に対する調査能力が最重要となります。
それには、不動産取引に関する知見・経験はもちろんですが、当該競売物件に関するリスク(不動産の現況・利用状況・権利関係・土地、境界の確認など)を精査できることが求められます。また、加えて、買受後の債務者・占有者への心遣いも含めた配慮等の交渉ノウハウも欠かせないところです。
当事務所は、やまとグループ企業全体で、これまでの知見を活かして、皆様方のお力になれますので、ぜひ、お問い合わせください。