◆40年ぶりの民法【相続法】 大幅な改正!どこが、どう変わる?
相続法改正案が本年7月6日、参議院本会議で可決・成立し、7月13日に公布されました。相続法は、40年ぶりの大改正です。
この改正は、超高齢化(相続人となる配偶者が80歳台後半)する社会の中で、家族のあり方が大きく変化し、関係法律の手直しが必要となったことが改正の大きな背景です。
改正の骨子は、被相続者の配偶者の居住の権利を保護するための方策や遺産分割・遺言制度・遺留分制度の見直し、相続の効力に関する見直し、さらには、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策など、多岐にわたる改正項目が盛り込まれてます。
この相続法改正のポイントを理解し、相続内容に応じて、使いこなすことができれば、そのメリットは大きな改正といえます。
なお、施行は、原則、2019年7月12日までです。ただし、自筆証書遺言の方式緩和は2019年1月13日、配偶者居住権の創設と自筆証書遺言の保管制度は、2020年7月12日までの政令で定める日に施行されます。
それでは、改正相続法の骨子であります【6つのポイント】について、簡単にご紹介します。
【1 配偶者の居住権を保護するための方策】
(1-1) 「配偶者居住権」の新設
➡配偶者居住権:自宅不動産を所有権と居住権に分離し、被相続人の配偶者は自宅の所有権がなくても、配偶者居住権を取得して住み続けられます。
(1-2) 「配偶者短期居住権」の新設
➡配偶者短期居住権:配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できます。
【2 遺産分割等に関する見直し】
(2-1) 結婚20年以上の配偶者への自宅贈与
➡結婚後20年以上の場合、配偶者への自宅贈与は相続財産に加算しないため、遺産分割で配偶者保護されます。
(2-2) 預貯金の「仮払い制度」の新設
➡遺産分割前でも、葬儀費用や生活費等の支払いについて、被相続人の預貯金から払い戻しが受けられます。
(2-3) 遺産分割前に処分した場合の遺産の範囲
➡相続開始後に共同相続人の一人が遺産の財産を処分した場合に、計算上、生じる不公平を是正する方策を設けられます。
【3 遺言制度に関する見直し】
(3-1) 自筆証書遺言の方式緩和
➡自筆証書遺言について、財産目録は自筆でなくてもパソコン等で可。また、「法務局における遺言書保管制度」の新設で検認不要になります。
(3-2) 遺言執行者の権限明確化
➡遺言執行者は、特定財産承継遺言がされた場合、対抗要件具備のための行為(登記申請等)ができます。
【4 遺留分制度に関する見直し】
(4)「遺留分侵害額請求権」の新設
➡遺言書で財産を得た相続人に対して、法定相続人の権利であります「遺留分」(兄弟姉妹除く)(法定相続分の1/2)について、現金請求ができることになります。一方、受遺者等の請求により、裁判所の判断で支払期限を延ばす仕組みが設けられます。
【5 相続の効力に関する見直し】
(5) 法定相続分を超える権利の承継について、対抗要件(登記)を備えなければ、第三者に対抗できない仕組みとなります。
【6 相続人以外の者の貢献を考慮する方策】
(6) 被相続人の療養看護等を行った場合の「特別寄与」
➡介護に貢献した相続人以外の親族(例:義父を介護していた長男の配偶者など)は相続人に金銭請求をすることができる制度が創設されます。
徒然のひとこと
居住権の評価法については、いくつかの方法が提案されてますが、その財産的な価値をどのように算定するかは、現時点、明確に定まってません。また、今回の改正の「居住権」は、法律婚の夫婦を前提にしてますが、事実婚は適用されないことになります。これは、これまでの判例(内縁の配偶者の居住権を認める)と異なる解釈となりますので、判例による保護なのか、法改正の保護なのか、今後の動向が注目されます。
また、今回の改正では、配偶者(妻)の相続分が「自宅の取得」プラス「預貯金」となって、現行と比べて、子の相続分が大きく減額となるケースが発生し、二次相続での問題も生じる可能性が大きいことから、二次相続も含めた相続対策が必要となります。
詳しくは、現行制度と比較しつつ、改正相続法の施行後を見据えて、これからの遺言書作成の対応について、ご相談を承りますので、当事務所に、ご連絡ください。お待ちしております。