◆【民泊 6月15日施行★直前情報★】民泊の届け出が、低調なのは、なぜ?
一般住宅の空き室において、有料で旅行者を泊めることができる「民泊」(住宅宿泊事業法)の施行まで、2週間後に迫ってます。
各都道府県等での民泊事業者の届け出は3月15日から開始してますが、受付当初から問い合わせは多いものの、開業希望者からの申請は、報道等によれば、現在(5月30日時点)、低調の状況が推移しているようです。
観光庁によると、3月15日の受付開始の時点では、都市圏を中心に多数の届出がでると予想してましたが、各自治体への民泊届出は、5月11日現在で全国で724件に留ま ってます。一部の県等においては、届出がゼロ、または、届出の件数が一桁の県も少なくない状況です。
一方、住宅宿泊管理業者の登録は、国土交通省がH30.5.11時点で公表している登録予定情報によると、全国で274(支店含む)の登録が予定され、そのうち、東京都に所在の登録予定の管理業者は、40%(113)を超えてます。
これは、民泊をビジネスとして展開を予定している事業者が先行している状況です。また、6月15日の施行に向け、物件の届出は低調なものの、民泊仲介大手企業とコンビニの連携が 発表されるなど、民泊市場の中長期的な成長を見込んで、活発な動きが加速化しております。
民泊仲介サイトでは、国内で6万件以上の民泊施設(物件)が掲載されてますが、各都道府県等での届出は、当初の予想を大きく下回ってます!なぜ、少ないのでしょうか。
届出が伸び悩んでいる背景には、いくつかの課題と現実的な問題があります。届出開始(H30.3/15)直後から当事務所にご相談を頂いた中で、届け出をしない理由・要因などは、次のとおりです。
一つには、民泊制度での「年間の営業日数の上限が180日ルール」(さらに、東京都23区のうち17区は、条例で上乗せ規制)では、「事業としての収益性が厳しい」と踏み切れない事業者が少なくない状況です。
現実、ホームスティ型の民泊経営は別ですが、事業規模によっては、収支見込みは、管理コストを30%以上と試算(賃貸経営の場合は管理費5%程度)すると、年180日の営業上限では「赤字」となる可能性もあり、事業ビジネスにならないと落胆される事業者も少なくない状況です。
営業日数の制限のない旅館業法の「簡易宿所」許可の取得(住居専用地域以外)や「特区民泊」(東京都大田区など)認定の取得によって、空き部屋を無駄なく活用できる事業に変更された相談者や1年間フルに活用できる賃貸経営(民泊プラス短期間の賃貸(1ヵ月以上の賃貸借契約)含む)の検討を始められた相談者など、民泊以外の事業ビジネスに方向転換する方も少なくない状況です。
二つには、届出には、20種類以上の添付書類に加え、建物の建築図面(平面図・立面図・構造図等の各設計図と内寸計測による平面図作成)の提出や消防法令に基づく必要な追加設備・現地確認など、煩雑な手続き・追加費用など、ハードルが高いことも、届出を躊躇する要因となっております。
三つ目には、 近隣とのトラブル(騒音・ゴミ等)を避けたいとの考えから、届け出を見送るケースも少なくない状況です。また、分譲マンションでは、8割を越えるマンション管理組合が民泊を禁止する方針も、届け出が進まない要因の一つとなってます。
四つ目には、現行の建築基準法では、宿泊施設を3階以上の階に設置する場合は、建物を通常よりも高い防火性能を有する「耐火建築物」とする必要があります。
都内をはじめ、100㎡未満の敷地に木造3階建が多く建築されていますが、これらの戸建住宅の3階部分は、宿泊の用に供することができず、届出ができないことからも断念するケースも見受けられます。
◆ 現在、既存建築ストックの活用を促す目的で、建築基準法の改正案が国会審議中です。
訪日外国人旅行者が現在の2800万人から、2年後の東京五輪の2020年には、4000万人が見込まれる状況で、ホテル・旅館等の宿泊施設の絶対数が不足することは明らかであり、代替施設を提供できる民泊の利点は大きいと言われてます。
こうした状況ですが、東京都23区内では、うち17区が独自規制として、営業区域・営業日数の制限を設けており、民泊経営のみでは、収益性の見込みが立たないケースが多く、住宅宿泊事業法の趣旨の一つである「民泊施設の普及・拡大」は、現実には、厳しいと言わざる得ない状況ではないでしょうか。
そこで求められることは、民泊では年間180日しか営業できなく、残りの185日は「空き状態」となることから、この185日のビジネス化をどうするかが、ホームスティ型を除く民泊経営者は、新たな取組・仕掛けが必要となるところです。
徒然のひとこと
当事務所には、3月15日の民泊の届出が始まってから、関心は高く、お問い合わせは多く頂いております。
制度の内容・手続きの書類や民泊経営としての収益性について、詳しい説明をしていくと、各法令(建築基準法令・消防法令等)に適合させるには、追加のリフォームや消防法令上の設備工事などが必要になるケースや必要な図面を一から作成するケースがあるなど、ハードルが高く、様子見や見送る相談者も少なくありません。
一方で、H30年1~3月を見ると、訪日外国人観光客の12%が民泊を利用するなど、需要は根強く、今後、大幅な増加も見込まれております。
また、既存のホテル宿泊料については、6月15日からの民泊施行が近づくなか、宿泊料を下げる動きも加速しており、民泊が訪日客の呼び込みにもつながり、新たなビジネスチャンスとなる可能性は大きいところです。
今後、建築基準法など関係法令の改正などを通じて、一般住宅の空き部屋において、さらに効果的に活用できる制度に見直され、民泊供給を掘り起こし、新たな事業【コンセプトは、「泊まる」「観る」「旅する」「+アルファ」】と組み合わせて、「民泊+新たな事業経営」が構築できれば、魅力あるビジネスに変わる期待度は高いといえます。
「民泊+新たな事業経営」の構築にご関心のある方は、当事務所にご相談ください。