◆ 今、全国で「空き家」が問題になってます!
全国的に空き家が急増している状況のなか、空家対策特別措置法(空家法)(H27年5月)が完全施行され、まもなく3年が経過しますが、全国の自治体(1,741市区町村)では、空き家対策は、どの程度、進んでいるのでしょうか?
空家法について、制度を簡単にご紹介しますと、著しい劣化や破損・腐朽等で「そのまま放置することが不適切」と認められる状態の「空家」について、市区町村は、「特定空家」に指定し、所有者に対し必要な措置を「助言、指導、勧告、命令」することができるとなってます。
なお、措置を命じられた者がそれに応じなかったり、対応が不十分であったときは、行政代執行法による措置(建物の解体など)ができることになってます。
国土交通省が公表した「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」(調査対象47都道府県1741市町村:調査回収率100%)の結果は、下記のとおりです。(H29.12.26公表)
(1) 空き家法第6条に基づく「空家等対策計画」の策定状況
全市区町村の約3割で策定されており、H29年度末には5割を超えると見込まれているものの、法施行から3年経過の現時点で、市区町村での計画の策定が難しい側面も見えてきます。
(2) 空き家法第14条に基づく「特定空家等」に対する措置実績
H29.10.1までに助言・指導8,555件のうち、勧告が417件、命令36件、代執行13件となってます。また、所有者が確知できない場合に実施される「略式代執行」が47件(ほとんどが住宅)と所有者不明の空き家が意外に多い実態も出ています。
また、国土交通省の「H26年度空家実態調査」結果から、空き家の状況をみると、第三者がすぐに住める状態でないほど老朽化し、賃貸用も売却用としても価値がなくなった住宅「その他の住宅」が空き家全体の4割以上を占めてます。
◆ では、なぜ、空き家が大きな問題なのでしょうか?
空き家は、人が住んでなく、管理されてないまま放置されてるケースが、ほとんどで、次の問題があります。
(1) 建物の老朽化
人が住まなくなると、建物に換気などされずに、一気に建物の老朽化が進行します。瓦の落下・外壁の剥落などの劣化はもちろん、雨漏り・シロアリの被害等によって倒壊につながる劣化も放置されてしまいます。
(2) 防災上の問題
老朽化が急速に進み、台風・大雨・大雪などの自然災害で倒壊の可能性が高くなり、倒壊による人的被害などが懸念されます。
(3) 防犯上の問題
放置されると、不法占有者等に利用されるなど、放火の対象となる可能性もあります。
(4) 環境悪化(衛生上・景観上・道路通行上)の問題
空き家になると、庭の雑草や害虫の発生など、近隣の環境悪化となり、近隣住民の不安・悪影響を生じさせます。
★ つまり、空き家問題とは、「空き家の所有者の問題」だけではなく、「空き家の近隣に住んでいる住民の問題」でもあり、各地で空き家問題が顕在化し、住まい環境が悪化・荒廃しているところです。
◆ では、なぜ、放置される空き家が増加しているのでしょうか?
(1) 空き家所有者の高齢化
居住者の死亡、老人ホーム等の施設入居などの理由がほとんどです。たとえ、子どもが相続しても、同居していないケースがほとんどであり、結果として、そのまま放置され、空き家になる可能性が高い状況です。
(2) 貸せない・売れない土地・家屋
空き家の中には、リフォーム・建て替えが難しい「既存不適格建物」(建築基準法では幅4m以上の道路に2m以上接している「接道義務」などがあり)で、希望する価格で売れず、結果として、放置されるケースが多くあります。
(3) 空き家を解体して、更地にできない
土地の固定資産税は、その土地に建物が建てられてる場合、特例があり、敷地200㎡以下の場合、固定資産税が1/6になりますが、更地にすると、特例は適用されずに、負担が4倍以上となります。建物さえあれば、固定資産税の軽減措置は継続しますので、負担を増やしたくないことから、老朽化した家屋でも解体できない理由となります。
◆ では、空き家対策は、どうしたらいいのでしょうか?
(1) 空き家の有効・利活用
この4月から国土交通省は、「全国版空き家・空き地バンク」を高機能化し、運用開始しており、また、各自治体による「空き家情報」も簡単にネットから検索でき、充実してきてます。
今、地方移住して、空き家・古民家などのリフォーム・イノベーションによる新たなビジネスや今までにない起業、また、農地付き空き家で「農ある暮らし」などを検討されてる方も多く、これらのニーズに応えられる「空き家情報」のマッチングによって、「空き家の有効・利活用」が期待されます。
「空き家」になる可能性がある場合には、これらの「空き家バンク」に登録して、ニーズに即した「空き家の有効・利活用」として、空き家にしない対策(賃貸・売買)が必要です。
(2) 空き家になる前に「売却」などの対策が必要
「自分が育った家だから残したい」や「先祖代々の家だから売れない」などの理由で、決断できずに、そのまま相続してしまい、しかし、交通費と時間と費用をかけてまでの管理もできずに、結果として、放置され、空き家となって、急激に老朽化が進行したあとでは、「売れない」「貸せない」状態となってしまいます。
親と同居していない場合、すでに住居が別にある場合には、実家が「空き家」になる前に、売却・賃貸・第三者委託・寄付なども、選択肢では、ないでしょうか。
徒然のひとこと
今、実家を相続した方の中で、実家の管理に困っている方は、少なくありません。
ご自分で定期的に実家に帰って、住宅・庭・水回りなどの清掃やメンテナンスするしかない。ただ、そのためだけに、「交通費と時間と費用」をかけ、仕事も犠牲にし、果たして必要なのかと悩みとなってます。
親の実家が、結果として、負担としてのしかかる時代は、すでに来ています。そのとき対応を考えるのではなく、とりまく状況によっては、事前に、対策を講じることが必要となります。
対策の一つとして、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。相続人が相続により、古い空き家(S56.5.31以前の建築)やこれを取り壊す後の敷地について、相続があった日から以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から「3,000万円」を特別控除する制度です。(H28年度税制改正)
今後、実家の家屋・土地などの相続について、難しい案件がある場合には、早めに対策が必要となりますので、当事務所に、お気軽に、ご相談ください。