「2022年問題」って聞いて、これは、何なの?
ご存知でしょうか。
これは、東京・名古屋・大阪の三大都市圏にある「都市農地」が2022年(平成34年)に「宅地」として、「不動産市場に出回るかもしれない」問題をいってます。
法律で定めた「都市農地の利活用制限」の歯止めがなくなるのが、この「2022年問題」なのです。
「利用制限の歯止めがなくなるって、どういうことですか?」と先日もご質問をいただきました。
これは、「生産緑地法」が改正された1991年(H3年)に、東京・名古屋・大阪の三大都市圏の市街化区域内にある農地は、「農地として保全する農地」と「宅地などに転用できる農地」に区分されたところです。
「生産緑地」に指定されなかった農地は「宅地並課税」(10a(1,000㎡)で数十万円)、一方、「生産緑地」に指定された農地は、「営農以外の利用は制限」されますが、固定資産税は「一般農地並課税」(10a(1,000㎡)で1,000円程度)、加えて、相続税は、「納税猶予の特例」で大幅に減額され、その猶予は、その土地が農地以外に転用されるまで続きます。
(※詳しくは、H28.12.29の【徒然やまとブログ】「東京で「農業」できますか?」で記述しております。)
「生産緑地法」には、指定解除の条件として、「生産緑地の所有者(主たる農業従事者)の死亡等により農業継続が困難となった場合、または、指定から30年以上が経過した場合に、市区町村に地価で買い取りを申し入れることにより、解除できる規定があります。
今回の「2022年問題」は、「生産緑地の指定から30年を経過した場合にも対象」の規定が適用されます。
つまり、「2022年問題」とは、1991年(H3年)から法律で定めた期限である「30年後」の「2022年」に、(今年から5年後)、「生産緑地の利用制限が外れる」期限がきます。
5年後の「2022年」には、東京都では、2,840ha(東京ドーム600個分)の広大な土地について、自治体に対して「地価の買い取り」の申し入れが可能となるわけです。
しかし、現実的には、自治体の財政事情等から「買い取りの実現の可能性は、ほとんどなく、非常にまれのケースに限られる」と聞いてます。
この場合、申請から3ヶ月経過後、市区町村が買い取りせず、また、他の農業者も購入を申し出ない場合には、「生産緑地」が解除され、農地転用などの一定の手続を経て、建物の建築も可能な売買自由な土地となります。
生産緑地の所有者は、後継者がいる場合(指定を継続して営農を続ける)を除き、大幅に増加する固定資産税の負担を収益で賄うために、「売却」や「転用し賃貸住宅等で収益資産化を図る」選択の可能性が高くなるところです。
「生産緑地」として指定されてる農地の約8割が「2022年」に解除されます。
ご質問された方から、再び、「いったい何が問題なのですか?」と尋ねられます。
「この「2022年問題」をきっかけに「大量な賃貸住宅」が供給されることになります。
現時点でも、「空き家問題」が顕在化しており、今後、都市部では、人口減少・高齢化が続く中、賃貸住宅が供給されても、借りる人も激減し、宅地の有効活用には限界があり、不動産市場の悪化は避けれない厳しい状況も予想されております。
この「2022年問題」の3年後には、「2025年問題」があります。
2025年になると、団塊の世代(S22~S24の生まれ)の方が後期高齢者(75歳以上)となり、三大都市圏の都市部において、高齢者介護施設や医療施設の用地確保の必要など、新たな問題も生じます。
三大都市圏の「生産緑地」の取扱いを今後どうするのかは、所有者の意向に委ねるだけでなく、将来ビジョンに立った指針が行政側に求められてる状況です。
【徒然のひとこと】
「2022年問題」をきっかけで、「生産緑地指定から30年経過で利活用制限がはずれる」ことによって、「都市農地」が無秩序に転用されることは、避けなければなりません。
「2022年問題」を通して、今後、三大都市圏の都市部においては、避けれない・大きな問題となる「少子高齢化社会」を見据えた「住みやすい・暮らしやすい・街づくり」が求められています。