⬛「瑕疵担保責任」から「契約内容不適合責任」に変わります!
【改正内容】
◆売買取引において、商品等の不足等が生じた場合の対応の規定が一本化されます!
★現行法では、(1)売買の目的物である商品等の全部又は一部が他人の所有物であった場合、(2)所有権以外の権利(地上権・質権等)が設定されている場合、(3)数量が不足する場合、(4)隠れた瑕疵がある場合、の4通りに分けて、担保責任を規定しています。改正民法では、この担保責任の規定を一本化しています。
なお、今回の民法改正にあわせて商法も改正されます。売買契約の規定において、改正民法と同じく「瑕疵」から「契約内容不適合」に表現が変わり、買主の追完請求も明記されます。(改正商法第526条)
【改正のポイント】
★契約内容(種類・品質・性能・数量等)に適合していない場合には、修理や代替物の引渡しを請求できます(追完請求)。ただし、契約内容の不適合を生じさせた原因が買主にある場合には、請求できません。
★追完請求ができない等の場合には、代金の減額請求ができます。
★上記で解決できない場合には、損害賠償請求、契約の解除も可能となります。
★追完請求・代金減額請求ができる期間は、契約不適合であることを知ったときから1年以内に不適合であった旨の通知が必要です。
(注:売主に対する1年以内の請求までは、しなくてもよい)
★該当条文【改正第562条】(要約版)
(買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由であるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
◆不動産売買契約においても、修補請求権・履行追完請求権が認められます。
★該当条文【改正第563条】(要約版)
(買主の代金減額請求権)
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時等に履行をしなければ、契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由であるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
【留意事項】
★契約不適合責任に係る改正ポイントは上記の通りですが、この規定はいずれも「任意規定」であることに注意してください。任意規定とは、その項目について契約書に記載がない場合には、法律の規定を適用するが、契約書に記載があるときは契約書の内容が法律よりも優先して適用される規定をいいます。
★そのため、契約書で契約不適合責任の免責を定めたり、期間を民法の規定よりも短く定めることは、民法改正後も可能です。 ただし、契約不適合責任を免責したり、期間を短くすることが、民法以外の法律で禁止されている場合は、そのルールには従う必要があります。
担保責任の期間の制限【事例:一般仲介用(土地建物)における不動産売買契約書:(契約不適合による修補請求等)】
★条文の変更箇所:「買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知」➡「引渡し完了日から3ヶ月以内に通知」の特約
第○条 売主は、買主に対し、引渡された土地及び建物が品質に関して契約内容に適合しないもの(「契約不適合」という。)であるときは、引渡完了日から3ヶ月以内に通知を受けたものに限り、契約不適合の責任を負います。ただし、建物については、次の場合のみ責任を負います。(1)・・・・、(2)・・・・、(3)・・・・、(4)・・・・(※ 責任ヶ所を特定する)
※ 宅建取引業者が自ら売主となる新築住宅の契約書は、上記と異なる条文の規定となります。
(まとめ)
◆改正民法は、契約不適合の程度の応じて代金減額請求権を認めるものです。
◆ただし、売主が契約不適合を補完する利益に配慮して、代金減額請求権の行使要件として、相当の期間を定めた補完の催告を経ることが必要とされてます。
◆契約不適合責任における売主の帰責理由の有無について
(1)追完(修補)請求権・・・・ 売主の帰責事由不要
(2)代替物引渡請求権・・・・売主の帰責事由不要
(3)代金減額請求権・・・・・売主の帰責事由不要
(4)損害賠償請求権・・・・・売主の帰責理由必要
(5)契約解除権・・・・・・・売主の帰責理由不要
【徒然やまとコラム】
★実務の場面では、契約に適合しているか否かが売主と買主の紛争となりますので、契約書には対象物の種類・品質・性能・数量等を明確にすることが必要となります。
★また、買主が追完請求しても、売主が買主の望まない方法での解決を強いることもあり得ることから、契約書には、「契約に不適合の場合には、買主の指定する方法により追完する」等を明記することが必要となります。
★なお、改正563条第2項の状況の場合、直ちに、代金減額請求が可能ですので、「買主は、◯◯の場合には、追完請求せずに代金減額請求をすることができる」と規定することも可能です。
★詳しくは、ご相談ください。
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